ぽじのうのう

しこうダイニング

箸を求めて三千里

普段そんなにいろいろなことを気にしない方ではあるが、これはさすがに引っかかる。

 

箸が折れた。

 

それも、今年で三本目。さすがに気になる。二度あることは三度ある?三度目の正直??

 

調べると、案の定縁起がどうの魂がどうのと出てくる出てくる。でもネガティブにとらえて気にしていたら何もできないので、『ありがとう、お疲れさま』とこれまでの活躍に感謝して、普通に分別!折れた原因に全く心当たりがないならもう少し気にしそうなものだが、わりと明確にある。なので、『ゴメンナサイ』も追悼で添えておこう。

 

一本目は携帯用のプラスチックの箸。これはだいぶ年季が入っていたシロモノだ。確かケンタッキーのオマケでもらったやつ。それもいつだったか記憶にないくらい前。だからまあ、折れてもそんなに不思議ではない。プラスチックだが、オマケだからクオリティもそれなりだろうし。むしろよく頑張ったと思う。

 

二本目は、家で使っていた自分用の箸。木の、結構いいやつ。だと思う。親に何かの記念でもらったもの。多角形で非常に使い勝手が良く、気に入っていた。でも雑な性格が災いしてか、木の素材なのに水につけっぱなしにしたことも多数、使用頻度も高いから、恐らく劣化だとは思う。とどめとなったのが、硬い食材への無謀とも言えるナイフ的使用。完全に自業自得。

 

三本目は、この家用の箸に近いものを求めていくつか購入したうちの一本。つい先日、バキッと先端が飛んだ。

 

おいおいおい…

 

「ヤワだなっ!?」(自分の扱い方は盛大に棚上げ)

 

まだ使い始めて一か月程度なのに。確かに少し細めの先端ではあったが、さすがに早い。早すぎる。もう少し頑張れ?どこぞのふるさと納税の返礼お箸っ。

 

まだ何本か箸はあるが…やはりこうなってくると恋しいのは、親からもらった長持ちで丈夫で比較的気に入っていた木の箸。失って初めて、他と比べてより一層わかるあの箸の良さ。とりあえず買ってみた箸を使うほどに求めてしまう、あの箸の手になじむ感触。

 

よし。

 

あの箸、二代目を探そう!!

 

そうだよ、同じ箸を買えばいいんじゃないか。そこそこイイ箸だろうと、そんな何万円もするものじゃないだろう。自分で多少好きに使えるくらいは稼いでいる。たいした趣味もないんだし、強めのこだわりが芽生えたものにこそ、お金は使うものだ。そう、今でしょっ!

 

さっそく親に連絡。もう何年も実家に帰っていない親不孝者、せめて適度に連絡取るくらいはしないとと思いつつ、離れて暮らしているとそれすらなかなか。『子は鎹』と言うけれど、今回はまさかの『箸は親子の鎹』!きっかけと話題をありがとう、箸!

 

だいぶ前、それこそ十年とか昔のこと。親もすっかりお忘れになられておりました。くれたことすら記憶にない模様。残念っ!

 

でもここまで動いた以上こちらも諦めきれず、写真を送りつけて記憶回帰を図る。

 

「あ~、もしかしたら…」

 

きた?思い出したっ??やったー!!

 

と喜んだのもつかの間。

 

入手先はどうやら近場のデパートらしいのだが、それが常設の売り場ではなく、たまたま催事で来ていたお店だったと思う、と。

 

催事。そう、私の母は催事や物産展大好き人間。なぜ催事でわざわざ箸をセレクトしたのかは謎だが、あの箸に出会わせてくれたことには感謝しかない。だがそうか、催事で出店していたお店か…。

 

遠のいた~!!

 

しかし私の執心ぶりに影響されたのか、母もわざわざデパートに問い合わせてくれて。結局店名はわからなかったが、そこまでしてくれたことに、少々胸がじんわりと熱くなった。

 

こうなったら意地でもあの箸と再会したい。いや、してみせる!!

 

拙いネット検索技術を駆使し、時間と情熱を傾け、求めている箸は『けずり箸』という種類のものではないかと結論付けた。形状が酷似しているし、おそらくコレだろう。あとは素材や色、値段を自分で選んで…。

 

扱っている店もそれなりにあったし、決めかねていた。まったく同じ箸ではないのだが、かなり近いし、おそらくこういった形状が私の好みなのだろう。どれを選んだとしても、それなりに使っていけば気に入るかもしれない。実際に実物を持って試していないから躊躇しているのか、値段がいろいろだったからか、決めきれず、なかなかポチれないでいた。

 

すると、母から連絡が。

 

「確か『江戸木箸』っていうやつだと思うのよー。ウチもお父さんが箸買い替えようとしてて…」

 

え、江戸木、箸…?

 

えーと。急に真犯人出てきた感じなんですけど…『江戸木箸』?箸専門店の箸も結構眺めたけど、そんな名前の箸あったっけ?

 

検索した結果、取り扱っている店がすぐに出てきた。そしていくつか見ていくうちに…

 

「コレじゃん!?」

 

明らかに同じ箸!絶対コレってわかるくらい、同じ箸!!

 

即、親に連絡を入れた。店名や、ネットでも購入可能なことを興奮気味に告げると、向こうも自分のことのように喜んでくれた。お互いスッキリ晴れ晴れ。こんな爽快感は久しぶりだ。ちなみに母は私と同様、火サスや謎解きも大好物。これはひょっとしてDNAか?(笑)

 

かくして、お気に入りの箸にたどりつくことに成功した。

 

蓋を開けるとさほど難しいことではないのだが、普段なら、箸くらいなら代替えのものでもいっか~、とアッサリ諦める方なので、今回の捜索作業はなかなか新鮮で楽しかった。

 

そして、いかにあの箸の使い勝手が良かったか、自分が気に入っていたかを思い知った。別な近い箸でも気に入ったかもしれない。というかおそらく問題なく使っていたと思う。でも、同じ箸にたどり着いた時のあの喜びの感情は見過ごせない。

 

何かを好きになる、特別と思う感情を抱くことは、そんなに多いことじゃない。これもいい出会い。もう他の箸が使えない…となると現実問題かなり困るが、少なくとも家で自分が使う箸は、気に入ったものを可能な限り使い続けて、気分良く食事を楽しみたいではないか。

 

諸々の理由は後付け。要は、私はあの箸が単純にお気に入り、好きなのだ。見た目、形状、触感、使い勝手…すべてにおいて、使うとテンションが上がる、ザ・お気に入りなのだ。

 

よっしゃ、来たれ!我がアゲ箸(二代目)~~!!

 

届いたら、今度はもっと大事に使おう。木の箸の扱い方もきちんと勉強して、大事に、長く使おう。

 

うん。

 

そんなホイホイ買い換えるには、少々…お値段もイイので。ええ。イイ箸だけにっ!