ぽじのうのう

しこうダイニング

40代と爪楊枝

なにも考えないで好き勝手できた10代。
イケイケノリノリだった無敵の20代。
若干身体と頭にズレや違和感を感じ始めた30代。

そしていま、内外ともに確実な老化の気配を認めざるを得ない40代。

同じように食べていたら、一枚、また一枚と己をコーティングする白いナチュラルヴェールが重厚になり

身体が重くなったせいなのか、体を動かすことがおっくうになり

運動したい、しなきゃという気持ちだけは強まっているものの、怪我しても治りが遅い、無理できないという建て前で、ますます肉体は甘やかされ

メタボ、生活習慣病へのレールにガッツリ乗ってるよなぁコレ…

と己を憂いまくる年代。

チラホラ目に付く白髪はもちろんだが、この歳になって初めて感じたことがある。

それは、モノが歯によく詰まるってこと!

これも老化じゃないだろうかっ?(なぜか興奮)

昼食後、何かが絶妙な角度で歯の隙間に引っかかってなかなか取れないでいた。口内吸引力を最大にしてみるもびくともしない。舌がつりそうなほど頑張ったがやはり取れない。

弱った。気になって仕事に集中できない…。

ふと、子供の頃、外食した際、食後に爪楊枝を使っていた親や祖父母の姿を思い出した。特に母。手で口元を隠しながら何やらやっている、どこか不可思議な食後の所作。子供心に不思議な感覚で眺めていた記憶がある。

なるほど。爪楊枝。こんな時にアレが欲しくなるのか!確かにアレならチョチョイと取れるだろう。なるほどぉ!!

爪楊枝。飲食店にはたいてい割り箸同様居座っているし、コンビニで貰える個包装割り箸にもたいてい同梱されている。後者はいつも爪の隙間を攻撃してくるから正直苦手な敵でもある。

これまで使う習慣も必要もなかったから散々な扱いだったが、ここへきて自分の中のモノの価値ランキングで急上昇。わが人生で初めてカレにスポットライトが当たった歴史的瞬間である!

ただ、ウチに本来の用途用の爪楊枝はない。竹串はあるのに。いつか爪楊枝が常備される時がくるのだろうか。家では…詰まってもすぐ歯磨きできるし、フロスも歯間ブラシもあるし…当分ないかな?

でも、以前何かの番組で見た覚えがある。驚くほどスッと歯の隙間に入って食べかすが気持ちよく取れるという爪楊枝。職人が作った爪楊枝。

使い捨てじゃなく、何度も使える、マイ爪楊枝。

…素敵じゃないか。

マイ箸のとなりに、マイ爪楊枝の居場所が設置される日は遠くないかもしれない。というかすでに導入してもいいかもしれない。今度調べてみよう。ちょっとイイ爪楊枝。これもある種『大人買い』という嗜みか?

歯に物が詰まる。それ自体は、おそらくあまり喜ばしい変化ではない。

だが、こうして新たな出会いや経験ができるとしたら、それはそれで素敵な変化じゃないか。

10代、20代、30代を経て、40代。同じものごとでも、より深く、いろいろな角度で味わうことができるようになっている。現に今日も、歯に詰まっていたゴマのかけらで歯垢…もとい思考の旅を楽しめた。爪楊枝の魅力(というか存在価値)、再発見。

楽しむための沸点は、いくら低くなっても問題がない。これは年を重ねるごとにより低くなっていって欲しいものだ。そういう変化は大歓迎。

まだまだ路線変更が可能な年代でもある40代。

理想の未来へ向かってガンバレ、40代!

老化の波も存分に楽しめ、40代!!